【ゲストによる卓話】島根大学医学部医学部長 竹谷 健 様

島根大学医学部医学部長 竹谷 健 様

本日は、子どもの不登校問題について皆さんにお話しするとともに、地域でご活躍の皆さんにぜひご協力をお願いしたいと思います。まず簡単に自己紹介をさせていただきますと、私は1971年松江生まれで、島根医科大学を卒業後、埼玉県立小児医療センターで小児がんの心理を学び、東京大学での研究を経て、2002年から出雲に戻り現在に至っています。
2016年に小児科教授を拝命し、昨年からは学部長も務めております。
全国の不登校児童生徒数は令和6年度で35万人に上り、毎年増え続けています。島根県はほぼ毎年ワーストスリーに入っており、小学生約1,000人、中学生約1,400人が不登校の状態にあります。中でも出雲市は島根県内で最も不登校の割合が高く、90日以上の完全不登校だけでなく登校しぶりも含めると、小学生の約10人に1人、中学生の約5人に1人が不登校に相当します。子どもの数が減っているにもかかわらず不登校は増え続けており、将来の出雲市を担う子どもたちへの影響は深刻です。
不登校の原因は主に三つです。一つ目は注意欠陥や起立性調節障害など子ども自身の特性で、全体の約10%程度です。二つ目は両親の不和やSNSの過剰使用、学校内の問題など家庭内外の環境因子で、これが最も多い原因です。三つ目はストレス耐性の低さで、これは不登校の子ども全員に共通しています。安心できる場所がなく自己肯定感が持てない子どもは、ストレスをやり過ごす力がなく、学校に行けなくなってしまいます。また、コロナ禍で集団生活が途切れた世代が今の大学生となっており、協調性やコミュニケーション能力の低下が顕著に表れています。これは不登校が将来にわたって社会全体に影響を及ぼすことを示しています。
強調したいのは、不登校は怠けではなく子どものSOSであり、病気だということです。子どもたちは「行きたいけど行けない」と苦しんでいます。特に小学校低学年では自分の気持ちをうまく言葉にできないため、周囲の大人が早期に気づいてあげることが大切です。不登校の2〜4割が成人後に引きこもりになるというデータもあり、出雲市の労働力低下や医療福祉負担の増加といった社会課題にも直結します。
対応の基本は、三食きちんと食べ規則正しく眠る生活リズムの確立です。これだけでも不登校の明らかな予防効果があります。不登校には回復の段階があり、完全に休んでいる時期に無理をさせても逆効果です。段階を見極めながら原因への対処を継続することが重要で、子どもの特性によっては薬物療法が有効な場合もありますので、医療機関への早期相談もぜひ選択肢に入れてください。また、ルールを決めたら親も同じように守ること。親が守らないルールは子どもの混乱を招き、不登校の一因にもなります。
地域でご活躍の皆さんにお願いしたいことが三つあります。一つ目は、子どもが安心して立ち寄れる居場所を作っていただくことです。会社でも自宅でも構いません。二つ目は、「怠けている」と決めつけず子どもの声に耳を傾けてください。三つ目は、仕事の見学や体験など社会との接点を作ることで、子どもの自信と自立心を育んでいただきたいということです。皆さんがどんな小さなことでも子どもをほめ、安心させてくださるだけで、ストレス耐性は確実に育まれます。
また、島根医科大学は本年開学50周年を迎えました。生体肝移植やドクターヘリ導入など地域医療に貢献してまいりましたが、次の50年を担う学生のため、新たな教育施設の建設を進めております。ご支援をいただけますと大変ありがたく、どうかよろしくお願いいたします。