【ゲストによる卓話】 NPO 法人たすけあい平田 理事長 熊谷美和子 様

NPO 法人たすけあい平田 理事長 熊谷美和子 様

 本日は、平田地区で助け合い活動を立ち上げた経緯と、現在の取り組みについてお話しさせていただきます。きっかけは今から 50 年以上前、私自身が困り果てて見知らぬ方に電話をかけたことでした。「何でも言ってちょうだい」と言っていただいた一言が、今日の活動の原点になっています。その後、東京から平田に戻り、親族も知人もいない中で人に助けられた体験を通じて、「遠くの親戚より近くの他人」という言葉を身をもって実感しました。平成 4 年 10 月、「困った時はお互い様」の気持ちで、地域の助け合い制度を立ち上げました。最初は「そんな夢みたいなこと」と言われ続けましたが、地区の公民館を何度も回り、700 人へのアンケートを実施したところ、79 名の方が名前と電話番号を書いて賛同してくださいました。これだけの仲間がいるならできると確信し、婦人会長や民生委員の女性部長など地域の代表者にも参加いただき、組織を整えていきました。そして平成 12 年 4 月、ボランティアからスタートした県内初の介護保険事業所として、NPO 法人として独立しました。
 活動開始当初の半年間は、草取りや買い物など屋外の簡単な依頼しかありませんでしたが、翌年から掃除・洗濯・調理・話し相手など室内の依頼も増え、利用者が着実に広がっていきました。今では「もう一人の家族」という合言葉のもと、在宅での看取りまで寄り添うケースも複数あります。施設を一切使わず、公的サービスと助け合いをフル活用しながら最期まで自宅で過ごされた方が、「平田に住んでよかった」とおっしゃってくださったことは、活動を続ける大きな力になっています。
 活動の大切な柱は、一人一人が「できる時にできることをする」という考え方です。内容も時間も強制しません。掃除・洗濯・草刈り・通院の付き添い・話し相手・パソコン指導、さらには若いお母さんへのおばあちゃん役での子育て支援まで、できることなら何でも対応しています。介護保険では対応できない客間の掃除や窓拭き、庭の草取りなども引き受けており、こうした隙間を埋める存在として地域に根付いています。また、活動者自身が輝いているのも大切なことです。退職後に家にこもっていた男性が協力会員として参加し、「輝いてきた」と奥様から電話がかかってきたこともあります。普段の家事や得意なことが人様のお役に立ち、「ありがとう」の言葉をいただける。それが生きがいになり、健康寿命を延ばすことにもつながっています。87 歳になった今も現役でバリバリ動いているメンバーがたくさんいます。
 出雲市でも現在 20 の助け合い団体が活動しており、国も在宅福祉推進の方針のもと、全国への広がりを目指しています。いつまでも住み慣れた地域で安心して暮らし続けるためには、行政に頼るだけでなく、住民自身の手でまちを作っていくことが必要です。皆さんもぜひ、できることから一歩踏み出していただければ幸いです。